オレ様探偵とキケンな調査
───ギシッ、カラン


重い扉についたベルを鳴らして店内に入ると、いかにもおしゃべり好きそうなかっぷくのいい女性が、奥の部屋から顔を出した。


「あら、いらっしゃいませ」


あたしの他にお客はいない。


この年の瀬にお客が1人もいない美容室って、どうなのよ…。


探偵社といい、この美容室といい、あたしはとことん店選びに疎いらしい。


いつもは───2年前まではどこに行くにも信吾さんが洋服屋さんもレストランも選んでくれてたもん、ね…。


「どうなさったんですか?」


そう声をかけてくれたおばさんは、あたしに向かってハンカチを差し出した。


泣きそうな…そんな悲しい顔、したくないのに。


2年も耐えてきた不幸顔は、そう簡単に拭えないらしい。
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