オレ様探偵とキケンな調査
「旦那さまとケンカでもしたの?」


「まぁ…そんなトコロです…」


「昔から言うのよね。女性は強くなりたくなると髪を切る、って」


「…強く?」


「尼さんだってそうじゃない。仏門に入る時“思いを断ち切る”ために髪を切る、って。誰かへの思いを切るって、強くなりたいってことでしょう?こういう商売してるとね、そんな女性をたくさん見るのよ。まぁ、今じゃそんな流行った店でもないから、年に数人だけど。あなたみたいな“覚悟”を抱えたお客さま、結構いるのよ?」


“覚悟”か…。


そうだよ、ね…。


あたしには“覚悟”がある。


信吾さんと別れて1人の暮らしに戻って、仕事を見つけてもう誰にも頼らない一人で生きていく“覚悟”。


だから切るんだ。


髪も、思い出も、信吾さんも。


「女は損ね。何かを捨てなきゃ何かを得られないなんて」


そう言って笑ったおばさんは、それきり何もしゃべらず、淡々とあたしの髪を前下がりのショートボブに仕上げた。
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