オレ様探偵とキケンな調査
顔にかぶせた本はいつの間にか床に落ちていて、無防備な帯金さんの寝顔がピカピカになった窓から入る冬の日射しに、ほのかに光っていた。


───やわらかそう。


隣にしゃがみ、光に映える茶色いパーマをかけた髪に少しだけ触れてみる。


あの日、抱き締められたぬくもりがなぜかわき上がる。


帯金さんの腕の中。


少しムスクの香りとタバコの匂いが混じった男の人の胸。


髪から胸へ、つ───と、指を這わせてみる。


規則正しく呼吸を繰り返すその胸に、あの時のドキドキが蘇る。


あたしはもう一度あの匂いを感じてみたくて、そっと帯金さんの胸に頬を寄せた。


「椿…」


呼ばれたその名にびっくりして顔を上げようとしたその刹那、あたしの首には帯金さんの腕が絡まっていた。
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