オレ様探偵とキケンな調査
「帯…金、さ…ん…?」


「いいから少し黙れ」


あたしの頭を抱え込むように抱き締めた帯金さんの腕には、少しずつ力がこもって。


───トクン、トクン


心地よく響く心臓の音に、あたしは体の力を抜いた。


ゴツゴツした手が短いあたしの髪をすく。


フラジールを扱うように、弱く、優しく。


髪1本1本に帯金さんの熱が伝わる。


その熱にあたしの体温はどんどん上がって。


目眩を覚えた瞬間、帯金さんはあたしの顔に強く力を込めて引き上げた。


あたしの目に写るのは、鋭さの消えた帯金さんの瞳。


いつもと違う、裸の瞳。


眩しくって目を閉じると。


帯金さんの唇があたしの唇にやさしく触れた。


帯金さんがあたしを掻き乱す。


やさしく、次第に強く、激しく。


「…んっ…」


息継ぎもできなくて漏らした自分の声に恥ずかしくなるけど、激しいキスにあたしは逆らえなくて。


いつからか求めることもしなかった唇に、あたしは従ってしまう。


「椿…」


帯金さんの声が、キスの合間に切なく漏れる。


もう一度その名を呼ばれたら。


あたしはきっと…。
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