*魔法の香り*
「オハヨー麻衣、パーマかけたんだ? 可愛いじゃん」
朝一番
営業補佐のフロアに入った瞬間
同期の由希が言ってくれた。
「ありがと由希……、あの、子供っぽく見えないかな?」
本当は、大人っぽくしようとして
雑誌見てお願いしたんだけど
「……ん~、前髪ちょっと短いから、幼く見えちゃうかもね?」
ガクッ!!
由希は見え透いたお世辞とか
無理なホメはしないから
きっと
今まで以上に子供っぽいんだろう。
「ちょっとガッカリしないでよ? ちゃんと麻衣に似合ってて可愛いわよ?」
「……ホント?」
「わたしがツマンナイお世辞言ったことある?」
「……ない、かも」
「でしょ~? それ、人谷先輩とのデート用?」
「!!??」
あたしは、あわてて由希の口を塞いで
フロアを見渡した。
幸い、あたし達以外
まだ出勤していない。
「由希、声大きいよ!!」
「隠すことないじゃん、やっと約束出来たんでしょ?」
「……そう、だけど」
デートと言うには
あまりにも
な、約束内容で……。