*魔法の香り*

 仕事のお詫びと言うか

 もう半ば無理矢理お願いしたような

 約束なんだよね……。



 それでも

 先輩と一緒にいられるなんて

 夢みたいなことだから



 ダメもとで

 頑張ってみようかなって



 気合入れてかけたパーマだったんだけど



 やっぱ

 幼くなってしまった。





「人谷先輩は、全然気のない子はちゃんと断るタイプだし、麻衣は十分可愛いんだから自信持ちなよ」



「……」





 由希にそう言われると

 少しだけ自信持ってみようかな?

 って気になるんだけど



 鏡の前に立つとどうしても

 幼い自分の容姿が気になって

 うつむいてしまう自分がいる。



 夕方

 人谷先輩が営業先から帰ってくる。



 そう思うだけで

 胸がドキドキし始める。



 だ、大丈夫かな? あたし





「仕方ないなぁ、帰る前にちょっとだけ、ロッカーで麻衣に魔法をかけてあげる」





 由希があたしのホッペたをはさみ

 顔を覗き込んでウインクした。



 へ?





「まほう?」



「そ! とっておきの魔法、だから麻衣ガンバレ」





 由希は

 女のあたしでも見とれそうな笑顔で

 そう励ましてくれた。



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