愛が冷めないマグカップ



宮間さんとあゆみは、まるで男同士がするように、肩を組んで宴会場へと向かった。

廊下を歩くあいだも宮間さんはふざけていて、笑いながらなぜか桃太郎にでてくる歌を口ずさんでいる。



「もーもたろさん、もーもたろさん、おこしにつけたーきびだんごー!ひっとつーわたしにくっださいなー!」まで歌ったら、「ハィ!」と言ってマイクを持つようにグーにした手をあゆみに向ける。


あゆみは仕方なく、「あーげまっしょうーあーげまっしょうー…」と続きを歌わなければならない。そんなくだらない遊びも、宮間さんと一緒だと楽しくてなんだか幸せな気分になるから不思議だとあゆみは思った。

まだ一滴もお酒を飲んでいないのに、普段の自分では考えられないくらいのハイテンションだ。これでお酒を飲んだらどうなってしまうんだろう。

旅の恥はかき捨てと言うけれど、できることならかき捨てたくなるほどの醜態は晒したくないものだ。




この旅行で初めて知ったこと、その1。

社員旅行はけっこう楽しい。修学旅行みたいなものだ。


その2。

宮間さんに長年好きな人がいる。それがマツさんで、ふたりは恐らく両想いだ。


その3。

エリカ様のすっぴん。これはすごい。メイクの技術は整形手術なみ。


その4。

小林部長はわたしが笹原主任のことを好きだと思っている。思い込みはかなり激しい。


その5。

小林部長はエリカ様とけっこういい感じのようだ。


その6。

小林部長は浴衣が似合う。湯飲みのセンスもいい。



その7。

小林部長は…。

わたしは気がつくと、小林部長のことばかり考えている。











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