生意気なキス
煙草を吸いながら、片手で夜会巻きにしていた髪を下ろし、長い巻き髪を手ぐしで整えていると。


片手に煙草と、もう片方の手におしぼりを持った男の人が喫煙室に入ってきた。



「どうも。隣いいですか?」


「......どうぞ」



断る理由もないので、了承すると男の人は隣に座り、煙草に火をつけた。

さっきまで一緒にいた、この人も飲み会のメンバーの一人。


名前は......忘れたけど、同僚や女の子たちに巻き毛ちゃん、巻き毛ちゃんと呼ばれていた。

ひとなつこい性格で、トイプードルみたいなボリュームのある癖毛だから、会社でそう呼ばれているらしい。


くりくりした丸い目に、大きな口で、本当に犬みたい。

トイプードルみたいな小さな犬じゃなくて、大きな犬。



「煙草は体に悪いから、止めた方がいいですよ」



大きな犬みたいな彼を横目で見ていると、私の視線に気づいた巻き毛ちゃんはヘラヘラ笑いながらそう言った。

煙草を吸いながら。



「煙草吸っている人に言われたくない」



煙草を吸わない人に言われるのならともかく、喫煙者には言われたくないと思う。

女で煙草を吸うのは印象が良くないのか......。
私の前の彼も喫煙者のくせに、煙草は止めた方がいいと言っていた。

男って、勝手だ。
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