生意気なキス
「俺もやめたいんですけどねー。
昨日まで禁煙してたけど、一年ぶりに吸いました」



目尻を下げてやっぱりニヤニヤしている彼は、人に注意するだけあって、やめる努力はしてるらしい。
吸ってたことには変わりないけど。


一年も禁煙出来てたのに、何かあったのかと聞けば、巻き毛ちゃんは苦笑しながら、吸い始めたばかりの煙草を灰皿に押し付けた。



「彼女がやめてって言うから禁煙してたんですけど、フラれちゃったんですよ。
なんかもう、どうでも良くなっちゃって」



あーあと、大げさにため息をついてから、巻き毛ちゃんはなぐさめてと、猫なで声を出して、もたれかかってきた。


なんなの、急に。

失恋した直後に気持ちが弱るのは、現に私もそうだから良く分かるけど、どうなぐさめていいのかも分からないし、年下の男を可愛いがる趣味もない。


なので、片手でもたれかかってきた彼を押し返す。



「べたべたしないでもらえる?
なぐさめてほしいなら、私よりも若くて可愛い子が向こうにいたでしょう。

あなたみたいなかっこいい人なら、喜んでなぐさめてくれるんじゃない?」



彼を押し返してから、冷たい目で見れば、何がそんなに面白いのか分からないけど、またヘラっと笑った。

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