恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「シスタードーナツって人気あるもんねぇ!実はねぇ、今日ねぇ、人気の商品十五種類が百円均一で売るってぇ、茜知ったからぁ、私ぃ、ハルちゃんがぁ、バイトに出る前にぃ、買いに行ったんだよぉ」
「えっ、な、何だ。私がいる時に買いに来てくれればよかったのに」
「買いに行くからぁ、いつバイトなのっ?ってメールを送ったんだけどぉ、返信がぁ、来なかったのぉ」
「…ご、ごめん」
「気にしなくてぇ、いいよぉ。ハルちゃん、携帯電話のぉ、調子が悪かったじゃないぃ」
「う、うん…」
「それにぃ、茜ぇ、絶対!シスタードーナツのチョコレートドーナツが食べたかったからぁ、ハルちゃんがいてもいなくてもぉ、買いに行くつもりだったのぉ。だからぁ、心配しないでぇ」
「う、ん…」
私は申し訳ない気持ちになった。今までも茜はシスタードーナツのドーナツを何度も買いに来てくれている。バイト先にとっては良いお客だし、来るたびに『がんばってねぇ』と励ましてくれた。大事にしなければならない人だろう。
「でねぇ、買いに行ったんだけどぉ、すっっっっっごい!人が並んでいてぇ、買うまでに三十分も待ったんだよぉ」
「三十分も!そりゃすげぇな!」
「今日は特にぃ、すごかったけどぉ、平日でもお昼時とかぁ、夕方とかぁ、けっこう込んでいるよねぇ」
「うん。ひっきりなしにお客は来るかな」
「そりゃハルちゃんも忙しいよな。時間によっては来たメール見ているヒマないかも」
「ハルちゃんーよくがんばっって、いるよねぇ」
香と茜と涼子は顔を見合わせうなずいた。そして私の言った事を信じ、とてもほめてくれた。少しも疑っていない。
 そんな三人を見ていたら、ますます申し訳なくなった。もともとこんな事になった原因は、バイト先が忙しいからではなく、私の言動にある。それもみんなに心配してもらうのがおこがましい内容で。
 だんだんウヤムヤにしてはいけない気がしてきた。
(ずっとこのままいて良いわけがない。自分がみんなの立場だったら、さっき涼子が言ったとおり、今頃ブチ切れて絶交しているもの。でもみんなはそんなことしない。ちゃんと待ってくれている。すばらしい友達のためにも、ある程度の真実は打ち明けなきゃ。香だけじゃなく、涼子と茜にも)
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