誘惑のプロポーズ

「えっ、なに?」

ヒールを履いてもまだ私より頭ひとつ高い彼が被さるようにして私を胸に閉じこめる。

「乗れよ」

「は?」

言ってる意味がわからなくて離れようとするのにそれを許してもらえない。

「もういい加減、俺のものになれ」

「それって……」

まさか私と結婚、て事?

驚いて腕の中で顔を上げる。

「冗談…、よね?」

「いいや、本気だ」

「私、中身はオヤジなのに?」

これまでも何度か『ちゃんと付き合おう』って言う彼に冗談のようにそう言っては曖昧な関係を続けてきた。

正直、休みの日も着飾って出掛けたり相手に気を使ったりするのが面倒だから、人恋しい時や寂しい時にこの人の体温を感じて満足できれば簡単な女とかセフレだとか思われていようが私は構わない。

「まだそれを言うのか」

いやいやいや。

本当だってば。

「別にビールが好きだろうが焼き鳥が好き
 だろうが、おまえは料理もするし部屋だっ
 ていつも綺麗じゃないか」

それは休日に出掛けたりするのが面倒だから家を居心地よくしてるだけ。

あなたが来ない日は一日中パジャマで過ごしたりするし、普段だってギリギリまで寝て朝食はエナジードリンク飲んで出社してるのよ。

「私にあなたの奥さんなんてできない」

チャラチャラしてるように見えて、実際は何事も計画を立ててこなす几帳面なあなたと
外面だけ体裁よくしてる私では違いすぎるもの。

「どうして?」

「え、ちょっと……何するのっ」

彼の片手が器用にブラウスのボタンをはずし始めた。

「俺たちこっちはこんなに相性いいのに」

「待って…どうしたのよ…んっ…」

首筋に熱い吐息がかかり敏感な部分をきつく吸われる。

「香水変えたのか?この匂いたまんない」

嘘でしょう?!

まさかの誘惑の香り?!

果乃ちゃんの言ってた事は本当なの?!

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