愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「勘違いしないで」

『え?』
「私が泣いているのは、健吾さんの話にショックを受けてるんじゃなくて、そんな話を彼女である私に、正直にしてくれたことがすごく嬉しかったの。だからこれは、嬉し泣き」

健吾さんは私の言葉に驚いて目を見開いた。

「私はあなたが思っている以上に、健吾さんが大好きなの。見くびらないで。私は、そんな経験を健吾さんのこれからの宝にして欲しいし、それがもし過ちだと本当に考えているのなら、絶対に繰り返さない。健吾さんは、そんな人。マサさんやテッちゃんに散々卑下されてきたのかも知れないけど、そんな経験の宝を持った健吾さんだからこそ、私は好きになったわけだし」

健吾さんは、私の目を見て、左目から涙が一粒流れ、頬を伝う。

『健吾、勝負あったな。お前の負け』
「マサさんも悪いんです。健吾さんを追い詰めるような言い草は、今後一切やめてください」
『そうだな。ごめん玲奈ちゃん』

健吾さんは、そんな私を黙って見つめていた。
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