愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『金澤だけ、俺の声に全く反応がなかったんだ。出席取ってるの分かっているのに答えないということは、集中力に欠けている。この後の俺の授業を舐められては困るからな。だから金澤を選んだんだ。それに引き換え大森はきちんと返事ができた。今日クラス一の返事だ』

"そんな小学生みたいな理由でいいのかよ"

と男子の小声が聞こえた。

『今の声に答えると、俺は、今日、みんなと初対面だ。だが、その中で学級委員を選ばなければならない。だから第一印象で決めようと思ったんだ。第一印象の悪いやつは他でも通用しない。返事は印象を良くするのに重要な要素なんだ』

先生は続ける。

『それに、面倒くさい学級委員に立候補するなんて、どう考えても下心みえみえだからな。そんなやつは学級委員としてろくな仕事をしない。大森の下心はあえて聞かないが、君の立候補には応じられない。だから、金澤、よろしくな』

"よろしくな"と言われても、よろしくされてる気がしない先生の淡々とした声。

『では、この調査表をもとに2者面談の日程を決めて明日には発表する。それで部活や塾などの調整を各自やって欲しい。では、今日は終わります。学級委員!』

え?私?

『ボケっとするな』
< 25 / 548 >

この作品をシェア

pagetop