愛されることの奇跡、愛することの軌跡
今、私は市民会館の客席にいる。


夏休みに入って2週間経った今日、吹奏楽部がコンクールに出場するので、観に来たのだ。


コンクールは生徒による指揮は禁止なので、顧問である健吾がする。


でも実際観に行こうと誘われたのは健吾じゃなくて、上杉くん。


健吾は多分、私が来ていることも知らないと思う。


他校の演奏を見ていて、懐かしさを感じる。


まだ引退して2ヶ月なのに。


『続けるのか?大学行っても』


「サックスのこと?続けるかどうかって、まだ進路も決まってないのにそんなのわかんない」


次の演奏準備の間に上杉くんの問いかけがあったから答えたけど、私はそこまでサックスに情熱はないと思う。
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