愛されることの奇跡、愛することの軌跡
そして―


6分間の演奏。


健吾は見事なタクトさばきだった。


あれ、私、健吾のことしか見てなかった?


演奏は、多分大きなミスはなかったと思うけど…


『次の学校終わったら、片付け手伝いに行こう』


「うん」


上杉くんの提案に合わせて市民会館裏の搬出口に回ると、ちょうどうちの学校の楽器を運んでいるところだった。


健吾もいたけど、余計な波風立てると面倒なことになるから、挨拶だけにとどめておいた。


「手伝うよ」


上杉くんと私は率先して手伝ったけど、ティンパニーだけは運ばせてもらえなかった。


上杉くんも、私のあの時のケガを知っているひとり。


まぁ、絆創膏レベルで大したケガじゃないんだけどね。


でも、あの事がきっかけで健吾と出会ったのなら、痛かったけど感謝かな。


結果は、何の賞にも呼ばれなかったけど、みんなが満足そうな顔をしてたから、悔いはないだろうな。
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