愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『可愛らしいお嬢様じゃない?お前がうらやましい』


『先輩は、あれから…』


『品行方正に過ごしてるよ。お前のようになりたいから。男として、信用されたいから』


"では、ごゆっくり"と、井上さんはその場を離れた。


「ホテルマンって、やっぱり動きにソツがないね」


『まぁね。でも、信じられないかな、今の先輩の姿』


健吾は他のお客さんの接客をしている井上さんの姿を遠目に見ながら言った。


『先輩も同じだったんだよ、俺みたいに、心の隙間を埋めるために酒、タバコ、女に逃げていた。俺がそれらを教えられたのも、実は先輩なんだよ。まぁ、タバコは吸わないけど』


「何で?」


『父さんがベビースモーカーでさ。その臭いや煙が嫌だったから、俺は絶対吸わない!みたいなね』


「そうなんだ。けど、井上さん、今は凄く立派に見えるよ」
< 394 / 548 >

この作品をシェア

pagetop