愛されることの奇跡、愛することの軌跡
俺は実穂に聞いてみたかった。


井上先輩の思いと妊娠との関係を。


『計画性がないとでも思った?』


以前の実穂なら、このまま逆上まっしぐら。


「いや、そうじゃないよ。先輩と実穂との関係も分からないのに一概には言えないでしょ」


今は体調も悪いし、俺の問いかけに答えて欲しいと願った。


『健吾なら、分かってくれるかな』


「俺に分かるように話してくれればな」


俺が意地悪に返すと、実穂は力なく笑った。


『ライちゃんのこと、もう10年も前から…片想いをしてたの』


ライちゃんとは、井上先輩のことだろうけど、俺にとっては耳慣れない呼び方。


『でも、ライちゃんにはずっと付き合っている女性がいてね。私の入る隙間なんて、これっぽっちもなかった。でもね、ライちゃんと話せるだけで良かったの。彼女と別れて、次の彼女が出来るまでの繋ぎでも構わなかった』
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