愛されることの奇跡、愛することの軌跡
そもそも、俺は高校の時に実穂と先輩がそれなりに話せる仲であることすら知らなかった。


クラスも違ったし…


でも、先輩はサッカー部でフォワードをやっていて、女子からはかなり人気のある有名人だったから、実穂も自分から追っかけてたミーハー感覚だったのかな。


『その繋ぎの立場で、私は自分の体をライちゃんに捧げた』


「え?」


実穂の初めての相手は、先輩だったの?


『でもね、ライちゃんにとって私は、遊び相手のひとり。成瀬川家のお嬢様を食べたって、友達に自慢して』


そんなの、知らなかった。


「え、それっていつの話?」


『高等部1年の9月。だからまだ健吾は中等部の頃だから、ライちゃんか私から話を聞かない限りは、知らないと思う』


なぜ、今まで先輩は話してくれなかったんだろう。


俺が紅葉のことで心の隙間を埋められず、大学生になってすぐに偶然居酒屋で会った井上先輩。


悪いこと、たくさん教えられたけど…実穂のことは全く教えてくれなかった。
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