ロッシュの限界
「ありがと、う」
絞り出した声は思ったよりも小さくて、やっぱり自分は駄目だなぁと苦笑する。
確かに迷いはない筈なのに、体はどうしても未練を叫ぶ。
けれどそれには気付かない振りをして、
「ほんとにありがと」
精いっぱいの笑顔を佐藤に向けた。
ありがとう。
好きだと言ってくれて。
あたしの気持ちを解ってくれて。
関係を壊さないでくれて。
狡いあたしを許してくれて。
「うん、俺も。ありがと」
そう言った佐藤の指先が微かに震えていたけれど。
あたしたちはゆっくり手を離した。
それが最後。それでおしまい。