ライトブルー
――しばらくすると、海が見えた。
私と浅黄の故郷は小さな港町だ。私も浅黄も、幼い頃からずっとここにいた。
でも、いつからだったかわからない。気がつくとここが窮屈に感じるようになっていた。
「俺を癒すのは潮風だけだ」
海岸線に沿って、鈍行電車は走っていく。
「浅黄って、ほんとここ好きだよね」
「楓は?」
「普通」
「……んだよ普通って。味気ねぇ奴」
「たかが故郷にお世辞なんか言う意味あんの?」
「俺はお世辞なんかひとつも言ってねぇよ。率直な感想。な、こういうのを『純粋』って言うんだよ、わかるか?」
「何言ってんの、あんた」
車内のアナウンスが入る。まもなく到着だ。