ライトブルー



「あら、浅黄、楓ちゃん」

 到着した駅の前で、浅黄のお母さんつまり私の叔母さんが待っていてくれた。

「浅黄、ご飯ちゃんとつくってる? 楓ちゃん任せでしょ」

 浅黄は黙る。

「楓ちゃん、いつもありがとね。ほんと、助かってるわ」

「……いえ」

 優しい微笑みを浮かべている叔母さんの前で、浅黄についての文句を言う気にはなれなかった。

「はい、母ちゃん。これ、土産」

 浅黄は小さな箱を叔母さんに手渡した。

「あらあら、もらってもいいの? こんな珍しいお菓子」

「美味ぇよ、それ」

 そんなやりとりを見ていたら、複雑な気分になった。私は親へのお土産のことなんか微塵も頭になかった。昔からそうだ。浅黄は故郷や家族を大事にする奴だ。



< 21 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop