ライトブルー
仕方なく私は砂浜に座った。隣で彰吾が言う。
「都会は楽しいか?」
「まあ」
楽しくなんかない。浅黄のせいだ。あいつがいるせいで、私は都会に行ったって自由になれない。
「楽しくなさそうだな」
そう言って彰吾は背伸びをする。
「自由になりたいだけです」
「意外だな」
「何が?」
「おまえが『自由』とか言うのが」
「意外って何ですか?だいたいあなたは私の何を知ってるっていうんですか?」
「いや、何も知らねぇけど」
「じゃあ干渉しないでください。迷惑です」
私は立ち上がった。腹が立つ。浅黄にも彰吾にも。そして波の音すら耳障りだ。
「ほら、これやるから機嫌直せ」
「は?」
手渡されたのはバイトの募集が載った紙だった。
「夏休みが終わるまでうちで雇ってやってもいいぜ」
そう言って彰吾は私を背にして軽やかな足取りで去っていった。