ライトブルー



 ホテルに着くと彰吾の姿があった。

「遅い」

「そんなこと言われても」

「これが制服だ。更衣室は向こう。じゃ、頑張れよ」

 それだけ言って彰吾はフロントの奥の事務室に戻ってしまった。
 渡された制服を手にぽかんとしてると、

「邪魔。退いて」

 威圧感むき出しの中年の女性従業員が、せわしなくロビーの床を掃除する。

「すみません」

「まさかあんたがバイトの子?」

「はい」

 彼女は露骨にうんざりした顔で舌打ちした。歓迎されていないのがよくわかる。

「たまにいるのよねぇ。ホテルの清掃なんか大した仕事じゃないって勘違いして入ってくる若者が」

 勘違いか……。まぁ、あながち間違ってもいないか。


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