Be happy!
目が合ってるから何か言い出すのかと思ったのに、松原主任は何にも言わずに目を逸らしてしまった。
なんとなく気まずくて、私もカップへと手を伸ばす。
「水野さん、終わったら一緒に帰ろう」
ふいに降ってきた声に、今にもカップを掴もうとしていた手を止めた。
松原主任はひとつ咳払いをして、
「遅くまで付き合わせてしまったし……、危ないから、ひとりで帰すのは心配だ」
と言った。
ぎこちない口調が、いつもの松原主任らしくない。
職場から最寄駅までは徒歩十分ほど。オフィスビルの立ち並ぶ幹線道路沿いの歩道をまっすぐ進むだけだから、暗くて危ない場所なんてない。
でも、これが松原主任の好意なら断るのも申し訳ない。