空の誓い、海との約束
◇ ◇ ◇
「……姫も私も、リフを本国へ連れて帰りたかった」
ダグラスは遠い目で何処かを見ていた。いつの間にか陛下の呼び方が姫に戻っている。彼が居た頃の事を鮮明に思い出しているんだろう。
「一緒に王宮へ戻るよう本国へ向かう前日まで説得し続けたが、奴は島に残ると言ってきかなかった。自分がそばに居る事は姫にとって不利な噂にしかならない、これ以上姫のそばには居られない、と言ってな」
「どうして? 好きならかえってそばに居たくなるんじゃないの?」
僕ならきっと、離れられない。そう思って尋ねると、ダグラスは重い溜息をついた。
「恐らく、その時既に奴は腹を括っていたんだ。姫を護る為に自分が犠牲になると」
思わず息を呑んだ。彼の想いは僕の考えをはるかに超えている。
相手のために命を掛けるほどの恋。見返りを求めず全てを投げ打つほどの激情。子どもの僕にはまだ分からない感情。
「リフは姫にも私にも一切告げず、一人で逝きやがった。知ってさえいれば、違う方法もあっただろうに……」
悔しそうに言葉を噛み締め、ダグラスは皺の寄った手を強く握った。
記憶を失くしたまま凄惨な経験をした彼。二重の意味で自分を救ってくれた陛下に想いを寄せ、陛下を護る為に海に散った、僕と同じ瞳を持つ人。