空の誓い、海との約束
「……きっとさ」

 僕は空のカップを見つめて言った。

「彼は、陛下やダグラスの事がとっても好きだったんだよ」

 ダグラスは眉間に皺を寄せて僕の方を見た。僕は目を上げて微笑みかける。

「彼は、陛下やダグラス達を不安にさせないために、黙っていたんじゃないかな。危険だけじゃなくて、不安な気持ちからも護りたかったんだよ、きっと」

 本人に尋ねる事が出来ない以上、想像でしかないけれど。

「マリーが言う通り、優しい人だったんだね、彼。賊に囚われさえしなければ――」

 もっと別の人生があったかもしれないのに。その言葉は喉元でつかえて出てこなかった。

『苦しむ人を、一人でも少なく』

 陛下が彼と交わした約束。僕には想像のつかないような苦しみを経験した彼の、切なる願い。

 僕の中にぽとりと落ちた何かが燻り始める。僕にも、何か、出来ないだろうか?

「……エミリア様の眼に狂いは無いということか」

「は?」

 素っ頓狂な声を上げた僕を無視し、ダグラスは居住いを正してこちらに向き直った。

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