空の誓い、海との約束
「と言うわけで、シエル王子。これが婚姻にまつわる儀式の説明書だ」

「ちょっ、何これ、分厚すぎ! ほとんど辞典か法律の本じゃん!」

 テーブルにどどんと置かれた半端無い厚みの本に、僕は思わず後ずさった。

「先に言っておいただろう。伴侶となる者には過剰な儀式が課せられていると」

「そ、そうだけど、この量は到底覚えきれない気が……」

 怯えつつダグラスを見上げる。涼しい顔で僕を見下ろし、彼は平然と告げる。

「儀式の手順の説明だけでなく、暗誦してもらう誓約の言葉も沢山ある。婚姻の日までに全て暗記するように」

「ちょ、それ、本気で言ってる?」

 僕は辞典、いや説明書に手を触れた。随分日焼けしている。いつから使われている説明書なんだろう。

 いや、それよりも、

「これ丸暗記って……頭パンクするかも」

 溜息をついて独りごちる。

「二年もあるんだ。楽勝だろう」

「二年しか、だよ!」

 ダグラスの言に僕は噛みつくように反論した。

 夜会の後に行われた昨夜の協議の結果、僕は特例で十六になった年に婚姻する事が決まった。

 本来なら十八になるまで結婚できないんだけど、エミリア様が僕より十年上な事もあり、一日も早い婚姻をと大臣達に望まれたのだ。



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