空の誓い、海との約束
「子どもが出来なければ毒殺、か……」

 そう呟いてふと、僕はマリーの話を思い出した。

『一日も早い跡継ぎの誕生を望まれて……何度も流産して、詰られました』

 跡継ぎを産む事を強要される重圧。望んでも子を宿せない辛さ。それは、僕には想像もつかない苦しみだろう。

「……そうか」

 僕は起き上がった。そうだ、この儀式が課されているのは僕だけじゃない。女王自身にも課されているのだ。

『私は、彼との約束を一緒に果たしてくれる男性を探しているの』

 そう言って、僕を選んでくれた彼女。もし子を生せなかった場合、彼女は僕を殺さなければいけない。

 女王であるがゆえに彼女が背負わされている重責は、僕の比ではない。

 そうだ。この全ては、彼女が彼と交わした約束を二人で果たす為、僕が彼女と共に歩んでいく為、どうしても越えなければならない壁なのだ。

 ならば、堂々と越えてみせよう。

 僕は一度本を閉じ、最初からきちんと読み直すことにした。

 覚えられないとか、時代錯誤だとか、恥ずかしいとか。そんな泣き言は二度と口にしない。

 ふわり、と潮風が舞い込んできて僕の頬を撫でた。窓の外には、城壁越しに見える青い海。

「あの日の誓い、必ず果たして見せるよ」

 そう囁いて、僕はページをめくった。


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