空の誓い、海との約束

 夜会出席までの間、僕は作法とダンスの特訓を受けた。ここ数年、国の行事や儀式には出させてもらっていないから多少鈍っていたけど、すぐ合格点をもらえた。

 海を隔てた隣国レシュノルティアの女王陛下は、御歳二十三歳、僕より十も歳上。女性でありながら、即位後五年の間に中々の功績を上げておられるという。

 国民の信頼も厚く、気さくな御方で美人との噂あり。

「しっかし、僕みたいなガキまで婿候補に挙げるなんて、よほど男に縁がないんだなぁ。まあ、御立場が邪魔してんだろうけど」

 王族の結婚となると、本人の感情だけじゃ決められない。やれ血筋がとか、やれ国交がとか、色々あるらしい。

 僕みたいに、国益とか野心とかくっだらない物を括り付けられてる婿候補もわんさか居るだろう。その中から伴侶を選ばなきゃいけないなんて、女王陛下も不憫な御方だ。

「エミリア様、か。名前は可愛いな」

 招待状を眺めながら想像した。どんな人だろう。バリバリの政治家か、噂通りの美女なのか。

「どうせなら、色っぽくて抱き心地の良い女性がいいなあ」

 臆面もなく呟いてみる。

 だって、僕の役目はそれだけだから。良家のお嬢さんに婿入りして、子を成し、御家の繁栄に一役買う。それだけ。

『それがお前の存在価値』

「っは、つまんねぇ価値」

 枕に顔をうずめて吐き捨てた。出来るだけ良い血筋の子孫を残す事しか期待されてないなんて、家畜みたいだ。

 恐らく父や母の目には、僕よりも部屋の調度品の方がはるかに価値が高いんだろう。


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