空の誓い、海との約束
 ジョイが下がった後、食事の時も仕度の時も僕は上の空だった。

 何でも大人しく言う事を聞く静かな僕を見て、付き人も作法指南役も昨日の折檻が効いたのだと満足したらしく、改めて説教しては来なかった。

『シエル様と同じ瞳の者を知っております』

 僕と同じ色の瞳を持つ人。死罪を犯し、絞首刑を宣告された囚人。

『とても良い子でした……真面目で努力家で……忠実で』

『彼は罪人で……賤民で……死罪に当たります』

 一体、彼は何故罪を犯したのだろう。そして何故罪を許され、何故国王に仕えたんだろう。

「シエル様、お時間でございます」

 女王陛下の待つ謁見の間に向かいながらも、僕は彼の事ばかり考えていた。




 レシュノルティアの王宮は眼下に海を見下ろす小高い丘の上にある。

 何百年か前に建てられた王城は要塞を兼ねていた為、城門の左右に二つ、宮殿の真横左右に二つ、背後に三つ、計七つの塔を従えた頑丈な城壁で四方をぐるりと囲まれていて、外から見ると宮殿らしい煌びやかさは無く重々しい雰囲気だ。ジョイの言っていた北塔は海側にある。

 城門から中へ進むと雰囲気は一変し、手入れの行き届いた緑や鮮やかな花々に迎えられる。改築と増築を重ねた宮殿は絢爛豪華ではないものの、アイボリーを貴重とした外観で温かみがある。

 伝統ある編み細工の絨毯や磨き上げられた調度品は、派手さは無いが落ち着きがあって感じが良い。


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