空の誓い、海との約束
 どうして、船? どうして、逃げなくちゃいけないの?

 怖い。私は一体どこに連れて行かれるのだろう。この人は本当に信用できる?

『あれは一度忠誠を誓った相手を絶対に裏切らない』

 お父様の言葉を思い出した。確かめたくて、手際よく出帆の準備をしているリフに問いかけた。

「……ねえ、リフは、私の味方?」

 自分の声が震えていた。冷たい風が吹き、涙が頬を伝っていると教えてくれた。

 彼は手を止めてこちらを振り返った。海色の瞳に映る明りが揺らめいた。

 彼は私の前に来て跪き、右手を胸に当てて一礼した。何かを誓う時の仕種だ。

「勿論でございます、王女様」

 顔を上げた彼はいつもの無表情な人ではなかった。真剣で、真っ直ぐな目で私に誓った。

「何があろうと、貴女様だけは必ずお護り致します」

 出帆します、と告げるリフに付いて船に乗り込んだ。

 船の中は寒かった。恐怖が背中に張り付いていたせいかもしれない。真っ直ぐ前を見て黙っているリフの隣で私は縮こまっていた。

 大丈夫、この人は信頼できる、お父様がそう言っていたのだから。そう自分に言い聞かせながら、震えていた。

 ふと、彼は身動きした。そして自分の着ている上着を脱いで私をしっかり包んでくれた。


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