とろける恋のヴィブラート
「だから、プレゼントしてもらったネックレスも外しました。それからガーネットの意味、わかりましたよ」


 奏は、何も映し出さない目で一点を見つめながら、まるで独り言のように呟いた。


「“一途な愛”ですよね」



「…………」



 降り続く雨は止むことを知らず、無情にも二人をどんどん濡らしていった。



「私、そんな柴野さんの気持ちにうまく応えることができませんでした……。私のせいで御堂さんの集中力をかき乱したって言ってましたけど、御堂さんこそ……御堂さんだって……私のこと――」


「っ――!?」


 気がつけば、奏は御堂の腕にしがみついていた。その胸に額を押し付けて、こっそりと溢れる涙をこぼした。



「私、御堂さんに伴奏を頼まれた時、すごく嬉しかった。でも――」


 片山の結婚式を御堂と成功させたい。御堂と一緒にピアノが弾きたい。


 という思いの裏で柴野と恋人として付き合っている自分が許せなかった。これ以上、自分の気持ちに嘘をつき続けることはできなかったのだ。
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