とろける恋のヴィブラート
「ずっと好きだった。お前の音楽に惹かれて、お前自身に惹かれて……やっと近づけたと思ったのにまた離れなきゃならないのかと思うともどかしかった。親父の言い分を呑むことで、お前を救えると思ったら……自分の気持ちを貫き通すことができなかった」


 肩口で囁かれる御堂の言葉は、どことなく切なげで、そして震えていた。


「御堂さん……」


 ずっと片想いだと思っていた。けれど、御堂も自分と同じ気持ちだったのだと知ると、奏の心は喜びで波打った。


「御堂さんのお父様もびっくりするくらいのコンサート企画して、大成功させてみせます」


「おい、それ、俺のセリフだぞ。ったく……これ以上、お前にカッコ悪いところ見せられないだろ」


 お互いに少し身を離すと、顔を見合わせてクスリと笑い合った。今にも届きそうな御堂の熱い吐息に、奏は口づけの予感を感じてそっと瞳を閉じた。



 しかし――。
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