お向かいさんに恋をして
「その出たんじゃないってー!
さくらちゃん、手、どけてー!」

耳を塞いでいた両手を、無理やり外された私は恐怖に震えた。

「朝から勘弁です……。
夜、眠れなくなる……」

「違うったら!」

こほん、とわざとらしく咳をして、留奈さんは言った。

「出たのはイケメンよ、イケメン!
滅多に見られないようなレアイケメンが出たのよ!」

え?
イケメン??

「しかもこのアパートに住んでるっぽいー!
さっきね、アパートの下ですれ違ったのー!
あぁ、スーツ姿と会釈した後の笑顔が超眩しかったぁ!」

うーんと、それってもしかして……。

「その人、お向かいの秋中さんですよ、きっと。
私より数日前に引っ越してきたって言っていました。
留奈さん、気がつかなかったんですか?」

「えぇー?! 知らない知らない!
このフロアにあんなイケメンが越してきてたなんて!」
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