お向かいさんに恋をして
留奈さんが言うには、このアパートはワンルームで単身用なので住民の出入りが激しく、いちいち気にしていられないらしい。

特に春のこの季節は一番出入りが激しいので、同じフロアで引越しが行われていようが、全く気にしていなかったそうだ。

「もー! 教えてよ!
さくらちゃんだけ先に知っててずるい!」

「ずるいって……。昨日挨拶に行ったからで……。たまたまですよ」

頬を膨らませて悔しがる留奈さんに苦笑い。

「それにしてもすっごいイケメン!
あんな彼氏いたら周りに自慢しまくりだよねー!
あたし、狙っちゃおうかなー?」

ニヤリと笑みを浮かべる瑠奈さんにむっとする。

「えー! 
秋中さんを独り占めしようなんて、瑠奈さんこそずるいです!

私が独り占めしたいのにー!」

「え?」
「え?」

私、今なんて言った……?

二人で見つめ合ったまま、しばし硬直。

「もしかして、さくらちゃん……」
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