伊賀襲撃前夜
成葉が井戸につくと、こちらに背を向けた祥之介が井戸の回りを警戒していた。
「祥之介」
成葉の声にビクリとしながら祥之介は振り返り成葉を見た。
「成葉か」
祥之介は成葉に歩み寄る。
「こんな所で何している?」
と、成葉。
「いや、井戸の方で怪しい物音がしたので見てきて欲しいと頼まれたんだが、別に何もないようだ。猿でも来たかな」
「…そうか」
「それより、どうした?」
「ん?」
「そんな格好して」
「っ!さっき祥之介が言ったじゃないか、女は女らしくしろと」
祥之介にマジマジと見られ、照れが隠しきれない成葉は段々と俯いた。
「ははっ、そうだったな。普段はそれこそ山猿みたいだから、見違えた」
「山猿って」
聞き捨てならない祥之介の言葉に思わず顔を上げる成葉。祥之介と目が合う。
「…綺麗だ」
「っば、馬鹿っ」
成葉は祥之介の肩を叩き、
「おっと」
笑いながら祥之介がよろめくふりをして後ろを向いた時、成葉は祥之介の背中から手を回し、ギュッと祥之介に寄り添った。
突然の出来事に驚く祥之介。
「おい、どうした?成葉」
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