スキキライ 〜お嬢様の恋愛事情〜

「逢士くんはどこから引っ越してきたのぉ?」

「髪ふわふわ〜♪」

「結構イイ身体してるねぇ」

「あはは、昔バスケしてたからね」

ドアを開けると、目の前には一人の男子を囲む女子の軍団。

死んだ虫に群がるアリンコのようだ…。

それよりもまず、ここらでは見ない顔だな…。
転入生か…?

「あれれ〜?なーんかたくさんいるね」

凪奈がヒョコッと私の右肩から顔を出した。

「ホントだぁ。群がってるねぇ」

同じように私の左肩から顔を出す蓮。
正直邪魔くさい。

「あぁ…アレね。新しく転入してきた男の子らしいんだけど…。なんか、凄いよね」

私達の存在に気付いたクラスの女生徒が耳打ちする。
苦笑いしたくなるのも、分かるな。

手のかかる転入生だな。
これもまた、私の世話を必要とするのだろうか。
…そんな事はないか、周りの女子が何とかしてくれるだろう。

「ふん…あんなもの気にしなくていいだろう。とにかく体育館へ向かうぞ。始業式が始まる頃だ」

そう言って私と凪奈と蓮の3人は体育館へ向かった。

廊下を歩いていると、後ろから女性の黄色い声が飛び交っているのが聞こえる。

きっとさっきの転入生にまとわり付く女子たちなのだろう。
なんとも耳障りでならない。

私は振り返った。

「そんな大勢で歩いていると、シマウマの集団みたいだぞ、見苦しい。少しは離れて歩いたらどうだ?それか、律儀に一列に並んで歩くか…?」

ふん…と鼻で笑うと、女子達は悔しそうに顔を歪ませた。
化粧で盛ったその顔で睨むと、顔がシワだらけでなんとも気持ちの悪い。

そんな顔を見るのが、たま〜に私の快感だったりする訳だ。


「皮肉を吐いたら静かになったな。そろそろ行くぞ、凪奈、蓮」

睨む女子達を見向きもせず、凪奈と蓮は私についてくる。

私が命令をすると、二人は声を合わせて返事をする。
昔から二人が好きでやっていることだ。
私が命令したことではない。

「「はい、お嬢♪」」

…みたいにね。




< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop