スキキライ 〜お嬢様の恋愛事情〜
「第65回、蘇芳学園始業式を開催致します!」
教頭がマイクを通してそう言った。
今更だが、私が通っている高校は蘇芳学園という私立高校だ。
蘇芳学園は、付属幼稚園、初等部、中等部、高等部、専修学校とあり、いわゆるマンモス校というやつ。
全校生徒はおよそ4000人近く。
私立なだけあって、ぼんぼんも多いようだ。
まぁ、私もその中の一人なのだが。
かと言って凪奈と蓮も私ほど裕福な生活を送っているわけではない。
幼稚園の頃ほとんど一緒に過ごし、遊んでいた為、自然と仲良くなったのだ。
どこぞのお嬢様が平凡な幼稚園に入ってきたので、幼稚園の先生も気を使っていた。
そこらの子供たちに私のことを説明し、「泣かせるな」だの「怒らせるな」だの「怪我させるな」だの言ったのだろう。
子供たちは私を避けていた。
その中で凪奈と蓮だけが私に優しく接してくれた。
優しさに慣れていなかった私は、その二人を苦手としていたが、それも気にせず凪奈と蓮は私に話しかけた。
それから段々と、心を開いて行った。
暖かいのだ、二人は。
昔のことを思い出している間に、始業式はほとんど終わっていた。
「起立、礼!」
起立の合図で少し行動が遅れた。
足が椅子の脚に引っかかり、少し前に倒れかけたが、前の人の背中をつい掴んでしまった。