夜の虹
「暑いー。死ぬー」

そう言いながら待機所の玄関を閉め靴を適当に脱いで部屋にあがる。
クスクス、と笑いながらリナちゃんがメンソールの煙草を吹かしていた。

「電話鳴ってる?」

私はカバンとコンビニの袋をダイニングテーブルにドサッと置きながら先に出勤していたリナちゃんに尋ねた。

「んー、まだですねぇ。新規がチラホラ。45分とかマジ面倒ですよねぇ」

客は1万4千円を払って45分の性的サービスを受けることができる。

始めて当店を利用する人を新規と言って、女の子を指名をしない限り出勤した順に女の子が割り当てられる。

誰が誰に当たるかは運でしかない。

私とリナちゃんが所属する風俗店はホテルヘルスと言って、お客さんが渋谷のラブホテルで待っていて、そこへ女の子が尋ねる形である。

待機所から最大で徒歩15分の距離をラブホテルからラブホテルへ移動し1回の出勤で何人もの相手をする。

誰が誰に当たるかは、運でしかない。
客も私たちも。


< 4 / 7 >

この作品をシェア

pagetop