土曜の昼下がりに、あなたと
***

土曜日の午後。

すべての準備を整えて、彼が来るのを待ちわびる。

昼食とちょっとした用事を済ませてから来ると言っていたので、ここへ着くのは二時頃だろうか。

いつもだったら――金曜の夜から彼の部屋にいて、だらだら寝て起きて、朝昼ごはんを食べて、またうだうだ、と……。

でも昨日は、わざと彼の部屋に行かなかった。

それを深く追求するでもなく、今日ここへ来ることもあっさりOKした高哉。

無関心?って思わないでもないけど、変に怪しまれるよりよかったかな?

昨夜は彼のことを想って眠り、今朝はきちんと早く起きてシャワーを浴びた。

新しい下着に、おろしたての服。

考えてみれば、スカートをはくのも久しぶり……。

ほんと、今までどれだけ自分磨きをさぼっていたんだろう。

でも、今日は違う。

今はもう違うから。

夕食の仕込みもばっちり。

もちろん、部屋の掃除だって。

そして、何を隠そう特別な秘策まであるのだから。

それは――私を包む果実のようなこの香り。

甘いけど甘すぎず、ふんわりと心が落ち着くフレグランス。

その香りに包まれているだけで、なんだか守られている気がする。

その香りをまとっているだけで、不思議と自信がわいてくる。

どうか――彼とまた心を重ねて想いを確かめ合えますように。

そんな祈りにも似た気持ちで彼を待つ私のもとへ――恋しい彼がやってきた。


「冴衣(さえ)のうちに来るの、久しぶりだな」

「ほんと、久々だよね」


いつもいつも私ばっかり押しかけて、我が物顔で寛いでいてごめんなさい……。

心の中で手を合わせつつ、キッチンに立ってお茶を淹れる。

私の部屋は二間ある高哉の部屋と違ってワンルーム。

あらためて思ったけど、女子の部屋にいる男子の存在感って、なんかすごい……。

久しぶりとはいえ、高哉は何度もここへ来たことがあるのに、なのに――。

まるで初めて彼が来た日のようにドキドキする。


「高哉は緑茶でいいんだよね?」


私はお茶の入った二人分のカップを、彼がいるローテーブルまで持っていった。


「はい、どうぞ。あ、まだけっこう熱いからね」

「えっ……あぁ、ありがとう」


ん?なんだろう?

彼の隣に座った瞬間、なんかちょっとびくりとされたような?

おまけに高哉ってば、電車の座席で見知らぬ人が詰めてきたときみたいに、腰を浮かせて私と距離をとったりして……。

なんか、いきなり避けられてる???

まさか……考えもしなかったけど、ひょっとして高哉って香水とか絶対にダメなタイプとか!?

そういえば、今まで彼と会うのに香水なんてつけたことなかったし……私、完全に裏目ってる!?


「あのね、高――」

「冴衣」

「えっ……ああっ……」


彼の肩越しに天井が見える。

何、この急展開……???

私……押し倒されちゃった。
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