恋の授業。



「あっ………」



ワタシの声は、ホクロメガネに聞こえたんだろうか。

頭の隅でそんなことを考えながら、目が離せない。



「おにぃが来たっ。しかも写真とか撮ってんの!」



容赦無く森川君を責める言葉は、妹ちゃんの“担任の先生”に向けられた。



ホクロメガネって…先生…だった、んだ……



今までのホクロメガネを思い出しながら、似合わない、と思った。



ジャージなんて着ちゃってさ。





「そんなこと言わない!せっかく来てくれたんだから!」



ホクロメガネの声が、やけに遠くから聞こえるような気がする…


…こんな話し方しない。
こんなの、ホクロメガネじゃない…



どうしてか、違和感と怒りがこみ上げてくる。



なんだこれ……
きっついなぁ。



妹ちゃんをしかりながらも、その目はあの優しい目だ。
ワタシを見てた時の目…



あっ。


そっか………。


ワタシって、子供扱いされてたんじゃなくて、本当に生徒みたいに思われてたんだ………。



優しい目も、顔も、言葉も…
今までの言動が子供扱いだったのも全部……。

今思えば、あの時も、あの時も…
『恋の授業』なんてキザな台詞も…

つい出た言葉だったんだ…。




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