恋の授業。
…一番立ちやすい所に連れてきてくれたのかな。
「ありがと、森川君大丈夫?」
森川君の気遣いを、うれしく感じた。
「うん、俺は大丈夫だから。くーちゃんはそこにいて。」
くーちゃん。
くーちゃん…
…くーちゃんっ?!……
も、森川君が!
くーちゃんって呼んでる!?
さっきまで川原さんだったよね?!
えぇぇえっ!慣れない…っ。
よくも急にそんな…恥ずかしくないのかな…と思いながら、正面の森川君を見てみると、外を見ながらニコニコしている。
背の高い森川君の視界の中に、150センチのワタシは入っているのだろうか…。
ふと、落ち着いて考えてみると、満員電車の中でお互い向き合っているこの状況。
森川君との距離はほんの数十センチ…
細かく言うならば、ワタシの足の間に森川君の足が挟まりかけている。
…うわーっ、いくら何でもこれは近いって!恥ずかしいって!
自覚してしまうと、かなり恥ずかしい…
羞恥で死んでしまいそうだった。
ドクドク…
しかも森川君なんか、良い匂いするし。
香水?でも全然キツくない。
ドクドクドク
鉄分不足かも…なんて。
森川君に対して恋愛感情があるわけではないけど、この状況に完全に緊張してる…。
そんな自分を、鉄分不足による動悸というカテゴリーに無理矢理押し込んだ。
痛い痛い痛い!
心臓痛い…!
今まで、自分の感情は上手くコントロールしてきたつもりだし、緊張なんて滅多にしなかったのに、ここのところワタシは変だ。
もーーー、ホント、早く着いてー!