満たされる夜
「別にお前が誰とどうしようと、俺には何も言えねぇけどさ…。その、裏切ったのは俺だし」


「分かってるならいいじゃない、それで」


二股をかけられていたことにも、怪しい行動があったであろうことにも気づかなかったのは私だ。
今となっては、どちらかが悪いなんてことはないのかも知れない。



「そういえばさ、もう終わりにしねぇ?」


遠藤はネクタイをゆるめながら、片手で煙草に火をつける。

不意に、課長のその仕草を思い出す。
あの体に触れた感触も。


「終わりって、何を?」


「だから、セフレはもうおしまい。嫁が妊娠したんだと。まいったぜ。俺はまだ遊びたかったのに」


妊娠?まいった?
……何が?


「まいったって何?嫌ならあんたが避妊すればいいだけのことでしょ?ふざけたこと言うな。本当にバカみたい。何であんたみたいな男とここまで…」

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