満たされる夜
「別に伊丹さんと何があろうが、それは聞かないけどさ。本当はモテるって言ってたろ。めぐ、気になってんのかなと思ってさ。うちの課長が伊丹さんと同期なんだと」


お茶を飲んで喉の詰まりを流す。

コイツは私と課長を取り持とうとでも言うのだろうか。


「伊丹さん、もう10年は彼女いないらしいぜ」


「そんなに?」


それじゃ、もしかして…私が久しぶりの相手だったかも知れない?
あの課長が遊んでいそうには見えないし…。


「ずっと付き合ってた人がいたらしいけど、その人が元カレと不倫して、ちょうど一緒にいるところに伊丹さんが出くわしたらしい。それが35歳のときだと。しかもその元カレは子持ちだったらしい。伊丹さんはその頃から今みたいな仕事の鬼になったみたいだぜ」


課長も裏切られたんだ…。

だから私に別れたほうがいい、マトモな男と付き合えって言ってくれたんだろうか。
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