満たされる夜
思いがけない言葉に、呆然と課長を見ていた。


課長と付き合い始めてから、いつかはと漠然と思うことはあったけど。




「課長よりいい男なんていません。現れません。…私でいいんですか?不倫してた女なのに」




課長が以前付き合っていた人は課長がいながら不倫をしていて、その相手と一緒にいるところに課長が出くわした―――。

本人からは何も聞いていないし、遠藤の情報だから詳しくは知らないけど。




「俺はめぐみがいないと空っぽなんだ。仕事ばっかりしているつまらない男だし、愛情表現も苦手だし」


「苦手なことや足りないところは誰にだってあります。前にも言ったでしょ?どんな課長も好きだって。クリスマスにだって約束したし。ずっと一緒にいるって。結婚、したいです」



安心したように微笑む課長はとても優しい表情になっている。


私よりずっと年上で、少し長く生きていて、色んな道を歩いてきたであろうこの人が、こんな私を必要としてくれている。




「…それに、課長を満たせるのは私だけでしょ?私を満たせるのも課長だけ」



腕が伸びてきて、しっかりと抱きしめてくれる。もっと抱きしめてほしくて、私は課長の膝に座って向かい合った。



初めて抱かれた夜は酔っ払っていて、課長はそんな私をなぜか見捨てずに自宅に連れて帰った。


空っぽの私に愛おしそうに触れてくれた。


たった一夜の体の関係から始まったけれど、その夜に私たちはすでに惹かれ合っていたんだと思う。
< 66 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop