バターリッチ・フィアンセ
「こういう、ふんわりしたシルエットか、それとも体のラインが出るものか……昴さんは、どっちがいいと思いますか?」
「……うん、赤」
「赤……? 昴さん、私の話ちゃんと聞いてます?」
「――え、あ、ごめん。なに?」
私はため息をつき、テーブルの上に広げていたドレスのファイルをパタンと閉じた。
……今日の昴さんは、何かおかしい。
部屋に帰ってきてからずっとこんな調子で、私の話は右から左へ流れて行ってしまうみたい。
「どうしたんですか? さっきからぼうっとしてますよ」
「んー? ……俺も衣装悩んでんの」
……嘘ばっかり。昴さんは帰ってきてから一度も自分のファイルは開いていないもの。
「昴さん、やっぱり、疲れがたまっているんじゃ……」
「――かもな。ごめん、先風呂入ってくる」
私の言葉を遮るようにして立ち上がった昴さんは、さっさとバスルームに消えてしまった。
どうして……? 今、目を合わせることもしてくれなかった。
ただ疲れているだけにはどうしても見えない。
正式な婚約を間近に控えたこのタイミングであんな態度を取られたら、気にするなと言う方が無理……
いやな予感が黒い雲のように胸に広がり、私はいてもたってもいられなくなった。