バターリッチ・フィアンセ


“お仕置き”と言いつつ、与えられるのはとろけそうな甘い時間。


こんなこと、好きでもない相手にできることなの……?

ねえ、昴さん。

私はこのくすぶる気持ちをどこへ向かわせればいいですか?


何度唇を重ねても、私たちの心は重なっていない。

甘さの中に切なさが滲んできて、私の胸が苦しくなってきた頃――



「――今日は、ここまで」

「え……?」

「これ以上したら、織絵が絶対起きられなくなるから」



キスの余韻を少しも感じさせない様子で、私の上から昴さんがあっさり退いた。

そのそっけなさが、私の胸をさらに強く締め付ける。


私に背を向けながらTシャツに袖を通す彼の背中に、私は声を出さずに語りかける。


今の……私にとってかなり有効なお仕置きだったみたいです。


こんな苦痛は生まれて初めて。

誰かに惹かれるって、こんなにも苦しい気持ちなの……?


そんな問いかけは彼に届くことなく。


私たちの間には、あんなにキスを交わしたのが嘘のように、詰められない距離が生まれている。



「……早く寝な、明日もこんなことされたくなかったら」


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