バターリッチ・フィアンセ


「……馬鹿だな、織絵は」


そう言いながら、昴さんは少し切なそうな顔をした。

けなされているのは私なのに、まるで彼の方が胸に痛みを覚えたように。


「どうして、そんな顔するの……?」


思わずそんな疑問を零すと、昴さんは一度静かに目を伏せた。

そして何かを吹っ切ったかのように上半身を起こすと、そのまま無言で私の上に覆い被さってきた。


キス、される――。

そう直感した時には、昴さんの柔らかな唇がすでに重なっていた。


「――ん」


今日は昨日よりも少し、私からも積極的になった。

このキスの意味を、ねじ込まれる舌が私の中に何を探しているのかを、感じ取りたくて。


だけど、やっぱり彼のキスで溶かしバターになってしまう私は、そんなぐずぐずの脳で彼の真意にたどり着くことなんて、できそうにないみたい。



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