バターリッチ・フィアンセ


「来てください……私は、大丈夫ですから」

「織絵……」

「心は……後からでも、いいです。だから、今は……」


“昴さんのしたいように、私を抱いて”


彼の耳元で、私はそうお願いした。

――どうしてだろう。

抱かれたい、というより、昴さんを強く抱き締めてあげたい気持ちが、私の口にそんな言葉を紡がせた。


自分を愛してるかどうかわからない人に身体を許す日が来るなんて、自分で自分が信じられない。

だけど、昴さんには絶対に誰かの助けが必要だと思うのだ。


事情を話してくれなくても、私の身体を差し出すことで、何かが変わるのなら、私は、一歩あなたの領域に、踏み込んでみたい――。


私の覚悟を感じ取ったのか、昴さんが私の膝に手を添えた。

ゆっくり開かれたそこに彼の身体が割り入ってきて、一気に貫かれた。


ひとりでに湧き上がった涙が、昴さんの動きに合わせて空中に舞い散る。

それでも、もっと優しくされたい、とは思わなかった。


自分の言葉通り、昴さんのしたいようにされたかったから、私は痛みに耐え、そしてそれが徐々に違う感覚になりつつあるのを、彼の首にしがみつきながら、感じ取っていた。



「――っ、織、絵……っ」



最後の瞬間に昴さんの口から漏れたその声には、さっきとは違う、強い感情が滲みだしている気がした。


それが愛情なのか、憎しみなのかはわからないけれど……


私の中の波もそれに反応するように高まって、次第に頭は真っ白になった――。



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