Unchanging Love
「そうなんだ・・・あっ、もしかして桜井さんって8階に住んでる?」


エッ!?何であなたが私の住んでる階なんて知ってるの。


「そうだけど・・・何で知ってるの?」


「あぁ、土曜日に隣に引っ越してきたヤツいただろ?それ俺のこと。日曜に挨拶に行ったんだけど、桜井さんもご両親もいなかったから」


確かに隣に誰かが引っ越してきた。


日曜は部活で1日中いなかった。


事前に高校生ってことは大家さんに聞いてはいたけれど会ったことはないはずだ。


じゃあ、なおさら謝んなきゃ!


同じクラスでお隣さんと気まずいなんてだめだめ!


仲良くしなきゃ!


でも・・・


やっぱり同じマンションの人に、私の家庭環境を知ってほしくない。


私の両親はもうこのマンションに住んでない。


何年も帰ってきていない。


きっと別々にどこかで家を借りているだろうし。


ただ毎月私名義の通帳に生活費が振り込まれているだけ。


きっとこの男と仲良くすることで、自然に両親と住んでいないことやその理由などが彼にわかってしまう。


この男は高校生で、まして男だからそんなことはないと思うけど、マンションで噂好きのオバサンに知れたら、陰口やあらぬ噂を立てられかねない。


それにもし学校でそんなことを言われたら・・・


多分友達は今までと変わらず仲良く接してくれるだろう。


しかし今までと違う目で見られるのは明らかだ。


そういう目で見られるのは嫌だ。


自分が悲劇のヒロインになるのは嫌だ。


親に捨てられたことよりも、他人からそんな目で見られたほうが悲しい。


私は強いんだから・・・誰にも同情してもらわなくても大丈夫。


それに同情を買っていると思われたくもない。


十分なの・・・嫌われるのは両親だけで十分。


どんな人にだって嫌われたくない。




< 16 / 22 >

この作品をシェア

pagetop